2025年1月、国土交通省による宅地建物取引業法施行規則の改正により、長年問題視されてきた「囲い込み」行為が処分対象となりました。(※1)
これから不動産業を開業しようと考えている方も、現在不動産会社を経営している方も、あらためて囲い込みについて理解しておくことが大切です。
そこで本記事では、不動産業の囲い込みの概要や違反となる具体的な行為から、囲い込み行為を行わないための防止策まで詳しく解説します。
あわせて、不動産の業務効率化ツール(株)iimonの「速いもんシリーズ」も紹介するので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
(※1)出典:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(平成13年国総動第3号)新旧対照条文」
目次
不動産業界の「囲い込み」とは?

不動産業界における「囲い込み」とは、売却の仲介を依頼された物件を故意に他社に紹介しないなど、自社でその物件を買う人を見つけ、売却も購入も自社でのみ成約させようとする行為を指します。
この問題は、長年にわたり不動産取引の透明性を阻害する要因として指摘されてきました。
不動産会社が囲い込みを行う主な理由は、売主からも買主からも仲介手数料が入る「両手取引」を狙うためです。
通常、不動産会社は売却の仲介を依頼された場合、成約に至れば売主から仲介手数料を受領できる「片手取引」が成立するのが本来の形です。
しかし、一部の不動産会社では、自社の利益を優先して他社が仲介できないように情報を制限するケースが見られます。
具体的には、他社からの問い合わせに対して「すでに申し込みが入っている」と虚偽の回答をしたり、内見の調整を意図的に遅らせたりする行為が該当します。
この行為により、売主にとっては成約に時間がかかり、場合によっては値下げをせざるを得ないという大きなデメリットになるのです。
一方、買主にとっても、買おうと思う物件にたどり着けないという大きなデメリットが生じます。
物件情報が適切に公開されないことで、本来であれば購入できたはずの物件を見つけられず、消費者の選択肢が制限されてしまいます。
2025年施行の不動産囲い込み規制の詳細と罰則内容

2025年1月より、国土交通省は宅地建物取引業法施行規則の改正を施行し、不動産売買における「囲い込み」は処分対象となりました。(※2)
この規制強化により、違反時の罰則内容も明確化されています。
規制強化の背景や処分対象となる具体的な囲い込み行為、違反時の罰則を詳しく解説します。
(※2)出典:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(平成13年国総動第3号)新旧対照条文」
規制強化の背景と消費者保護の観点
国土交通省の今回の決定は、消費者の利益を守り、不動産取引の透明性を高めることを目的としています。
背景には、一部の不動産会社による過度な囲い込み行為が、市場の健全な競争を阻害し、消費者の選択肢を制限しているという深刻な懸念があります。
従来は、囲い込み行為が発生していても、それを直接的に取り締まる具体的な規定が不十分でした。
今回の規制強化により、これまで曖昧だった部分が明確化され、実効性のある取り締まりが可能になったのです。
また、不動産取引は消費者にとって人生最大の買い物であることが多く、その取引の公正性を確保することは社会的な責任でもあります。
消費者が安心して不動産取引を行える環境を整備することで、不動産市場全体の健全な発展を促進する狙いもあります。
処分対象となる具体的な囲い込み行為
処分対象となる囲い込みの具体的な行為としては、「専属専任媒介契約および専任媒介契約で預かった物件の販売状況」と「レインズの登録ステータス」に相違がある場合です。
たとえば、実際には購入申し込みがないにもかかわらず「書面による購入申し込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」といった虚偽のステータスを登録した場合には、宅建業法第65条第1項に基づき指示処分の対象となります。
また、専属専任媒介契約や専任媒介契約を締結した場合、契約締結後の一定期間内にレインズへの登録を完了し、取引状況を適切に更新しなければなりません。
専属専任媒介契約では契約締結から5日以内、専任媒介契約では7日以内の登録が義務付けられており、この期限を過ぎた場合も処分対象となります。
さらに、他社からの問い合わせに対して正当な理由なく回答を拒否したり、物件の不完全な情報しか提供しなかったりする行為も同様です。
違反時の罰則
違反時の罰則は、宅建業法違反とレインズの違反の両面から科されます。
国土交通省は「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準(最終改訂平成23年10月26日)」を公表しており、違反行為に対する具体的な基準と適用範囲を明確にしています。(※3)
処分は段階的に行われ、まず指示処分から始まり、違反行為の是正や再発防止策の実施が命じられるのです。
指示処分に従わない場合や、同様の違反を繰り返した場合は、業務停止処分が科されます。
業務停止期間は違反の程度により異なりますが、通常は数日から数か月の範囲で決定されます。
最も重い処分は免許取消処分です。
悪質な違反行為を繰り返した場合や、業務停止処分後も改善が見られない場合に適用されます。
免許取消処分を受けた場合、一定期間は新たな宅建業免許を取得できません。
さらに、違反事業者名の公表による社会的制裁も検討されており、業界内での信用低下や顧客離れにつながる可能性があります。
公表された事業者名はインターネット上で長期間残り続けるため、事業継続に深刻な影響を与える可能性があります。
(※3)出典:国土交通省|宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準
不動産会社が今すぐ取るべき囲い込み防止策

不動産会社が今すぐ取るべき囲い込み防止策は、以下のとおりです。
- 営業担当者への教育
- 社内コンプライアンス体制の構築
- 物件情報の適切な開示
それぞれ詳しく解説します。
社内コンプライアンス体制の構築
囲い込み防止のためには、まず社内の意識改革と体制整備が不可欠です。
経営陣から営業担当者まで、全社員が囲い込みのリスクと法的な問題を理解し、コンプライアンスを最優先とする企業文化を構築する必要があります。
具体的には、囲い込み防止に関する社内規程を策定しましょう。
この規程では、禁止行為の明確化や違反時の社内処分、報告体制などを詳細に定める必要があります。
また、違反行為を発見した場合の報告・対応手順の明文化も重要な要素です。
営業担当者が違反行為を発見した場合、誰に報告すべきか、どのような手順で対応すべきかを明確にしておくことで、迅速な問題解決が可能になります。
物件情報の適切な開示
業者は取引状況を正確に登録し、情報を適切に開示する義務が生じます。
レインズへの登録においては、物件の実際の状況を正確に反映させ、虚偽の情報を登録しないよう徹底する必要があります。
物件情報の開示では、他社からの問い合わせに対して迅速かつ正確に対応することが重要です。
問い合わせを受けた際は、物件の現在の状況を正確に伝え、内見の依頼があった場合は合理的な期間内に日程調整を行う必要があります。
物件の写真や間取り図などの資料についても、品質を統一し、他社にも同様の情報を提供することが重要です。
営業担当者への教育
営業担当者は囲い込み防止の最前線に立つため、継続的な教育・研修が不可欠です。
宅建業法の改正内容や囲い込みに該当する具体的な行為、処分内容について定期的に研修を実施し、全営業担当者の理解を深めることが大切です。
研修では、法令の内容だけでなく、実際の事例を用いた実践的な内容を含める必要があります。
どのような行為が囲い込みに該当するのか、どのような対応が適切なのかを具体的に示すことで、営業担当者の理解を深められます。
顧客からの問い合わせ対応や内見調整、資料提供などの業務プロセスについて社内で標準化しましょう。
効率化できる部分に関して、個人の判断に委ねられる部分を最小限に抑えることで、意図しない囲い込み行為を防げます。
不動産業務を効率化!(株)iimonの「速いもんシリーズ」

自社で囲い込み行為が起こるのを防止するためには、日々の業務の効率化を推進し、営業や教育に充てられる時間をより増やすことが大切です。
(株)iimonが提供している「速いもんシリーズ」には、以下のように物件入力から追客まで、不動産業務全般を効率化できるツールがあります。
サービス名 | 特徴 |
不動産ポータルサイトへの入力作業を効率化 | |
賃貸物件の新着・更新情報の洗い出しを効率化 | |
ライバル会社の掲載状況を自動分析 | |
物件情報を1クリックでPDF・URL化 | |
賃貸物件情報の元付会社を簡単に特定 | |
売買・賃貸物件の募集状況をまとめて確認 | |
1サイトで複数サイトの物件検索が可能 | |
見積書をワンクリックで瞬時に作成 | |
入力間違い╱他社募集╱条件判定を1クリックで判定 |
たとえば、「入力速いもん」を導入すれば、不動産ポータルサイトへの物件情報の入力作業を最短2クリックで完了できます。
必要なサービスだけを組み合わせて使えるので、コスパもよいのがポイントです。
【導入事例】物件出し効率が2倍に向上し、来店率・成約率も改善!
株式会社三好不動産は福岡県を中心に独自のDX戦略で事業を拡大している不動産会社です。
同社は数年前から自社開発によるシステム化を検討していましたが、開発コストなどを理由に断念し、創業当初より注目していた(株)iimonのサービス導入を決断しました。
導入前は物件出しと登録作業を複数名がバラバラのタイミングで行っており、業者間サイトと自社システムの情報照会に時間がかかっていました。
「物出速いもん」「物確速いもん」導入後は、
- 1時間あたりの新規物件掲載件数が10件から20件以上に倍増
- 15分程度の隙間時間でも作業可能になり、現場スタッフが新着物件を即座に把握
- 物件確認頻度が月3回から週4回に増加し、タイムラグが格段に減少
- 最新情報をお客様に提案できるようになり、来店率・成約率が改善
などの効果が現れ、自社でやりたくてもやれなかった業務効率化を実現しています。
まとめ
2025年1月の法改正により、不動産業界の「囲い込み」行為が処分対象となりました。
囲い込みとは、売却物件を故意に他社に紹介せず自社での両手取引を狙う行為で、売主・買主双方に不利益をもたらします。
違反時は指示処分から免許取消まで段階的な罰則が科されるため、不動産会社は
- 社内コンプライアンス体制の構築
- 物件情報の適切な開示
- 営業担当者への継続的な教育
が必要です。
(株)iimonの「速いもんシリーズ」を活用して業務効率化を図ることで、コンプライアンス体制や教育強化に充てる時間を創出し、自社の囲い込み行為を防止していきましょう。

iimon 編集部