不動産売却を検討する場合、気になるのは「どのくらいの期間で売れるのか?」でしょう。
「住み替えの予定がある」「まとまった資金が必要」「相続した物件を手放したい」など、理由はさまざまですが、売却完了までの期間が読めないと次のステップに進めず不安になる方も多いです。
不動産売却にかかる期間は物件の条件や市場環境、売却活動の進め方によって大きく変わります。
数日で買い手が見つかることもあれば、1年以上かかるケースもあるのが実情です。
そこで本記事では、不動産売却にかかる平均期間や具体的な流れ、売却が長引く原因とその対策について詳しく解説します。
適切な期間の目安を知ることで、余裕をもった計画を立てられるようになります。
目次
不動産売却の平均期間は3〜8か月

不動産売却にかかる平均期間は、一般的に3〜8か月程度が目安とされています。
ただし、物件の種類やエリア、築年数、価格設定などによって大きく変わるため、広告掲載をして数日で買い手が現れるケースもあれば、売却までに1年以上かかるケースもあります。
どちらの場合にしろ、余裕をもったスケジュール設定が重要です。
東京カンテイが公表しているデータによると、首都圏に限った話になりますが、中古マンションの売却期間は平均で5か月です。(※1)
このデータからもわかるように、都市部の需要が高いエリアでも一定の時間を要する可能性があることを認識しておきましょう。
(※1)出典:株式会社東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」
不動産売却の具体的な流れ

不動産売却は大きく分けて、以下3つのフェーズに分かれます。
- 不動産売却開始前の準備期間【数日〜2週間程度】
- 売却活動期間【3〜6か月程度】
- 売買契約から引き渡しまでの期間【1〜2か月程度】
それぞれの段階でどのような作業が発生し、どの程度の期間を要するのかを把握しておくことで全体のスケジュールが見えてきます。
準備期間から引き渡しまでの具体的な流れに関して、詳しく解説するのでぜひ参考にしてみてください。
不動産売却開始前の準備期間【数日〜2週間程度】
売却活動を始める前には、以下のような準備作業が必要です。
- 必要書類の準備
- 査定依頼
- 媒介契約の締結
まず、登記簿謄本や固定資産税納税通知書、建築確認済証、間取り図などの書類を揃えなければなりません。
これらの書類は査定や売買契約の際に必要となるため、早めに準備しておくことが大切です。
その後、複数の不動産会社に査定を依頼し、訪問査定を実施してもらいます。
訪問査定では物件の状態や周辺環境を詳細にチェックし、査定結果が出るまで3日〜1週間程度を要します。
査定額や担当者の対応を比較検討したうえで、信頼できる不動産会社を選び、媒介契約を締結するのが一般的です。
媒介契約には専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3種類があり、以下のようにそれぞれ特徴が異なります。
項目 | 専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
契約できる不動産会社の数 | 1社のみ | 1社のみ | 複数社可能 |
自己発見取引 | 不可 | 可能 | 可能 |
レインズへの登録義務 | あり(契約から5日以内) | あり(契約から7日以内) | なし(任意) |
活動報告の頻度 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | なし(任意) |
契約期間 | 3か月以内 | 3か月以内 | 3か月以内(法的制限なし) |
不動産会社の積極性 | 高い | 高い | やや低い |
向いているケース | ・早期売却を目指す場合 ・不動産会社に全面的に任せたい場合 | ・早期売却を目指しつつ、自分でも買主を探したい場合 | ・複数社の意見を聞きたい場合 ・時間に余裕がある場合 |
この準備段階をスムーズに進めることで、その後の売却活動を効率的にスタートできます。
売却活動期間【3〜6か月程度】
媒介契約締結後、本格的な売却活動が始まります。
不動産会社は物件情報をポータルサイトに掲載し、チラシ配布や店頭広告、顧客リストへの営業活動などを展開します。
最近ではとくにインターネット掲載が重要で、国土交通省の資料でも、多くの購入希望者がまずインターネットで物件を探すことがわかっています。(※2)
そのため、魅力的な写真と詳細な物件情報の掲載が欠かせません。
購入希望者からの問い合わせがあれば内覧対応を行い、物件の魅力を直接アピールします。
内覧は主に週末に集中するため、売主のスケジュール調整が必要になるため、できるだけ柔軟に対応できる体制を整えておくと機会損失を防げます。
一般的に3〜6か月で買主が見つかりますが、物件の条件や市場環境によっては長期化することも珍しくありません。
ただ、この期間に購入希望者が現れない場合は、価格見直しや広告戦略の変更などが必要です。
(※2)出典:国土交通省|令和3年度 住宅市場動向調査 ~調査結果の概要(抜粋)~(P.3)
売買契約から引き渡しまでの期間【1〜2か月程度】
購入希望者が現れたら、価格や引き渡し時期などの条件交渉を行い、双方が合意に達したら売買契約を締結します。
契約後、買主は住宅ローンの本審査を申し込み、審査結果が出るまで1〜2週間かかります。
万が一、審査に通らなかった場合は契約が白紙解除となる可能性もあるので、契約時に確認しておきましょう。
本審査が通過したら決済日を調整し、残金の支払いと所有権移転登記を同時に行います。
売主は、決済日までに物件を空にして引き渡せる状態にしておく必要があります。
引っ越しや清掃、修繕が必要な箇所があれば、この期間中に済ませておきましょう。
引き渡し完了後、売主は翌年の確定申告で譲渡所得の申告を行います。
売却益が出た場合は税金が発生するため、事前に税理士や不動産会社に相談しておくことをおすすめします。
不動産売却期間が長引く5つの原因

不動産がなかなか売れない場合、必ずなんらかの原因があります。
原因を正しく把握することで適切な対策を講じることが可能です。
売却期間が長期化する代表的な原因には、以下の5つが挙げられます。
- 売り出し価格が相場より高い
- 不動産会社の営業力不足
- 売り出しタイミングが悪い
- 物件の魅力が伝わっていない
- 物件の条件や立地に問題がある
自分の物件に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
売り出し価格が相場より高い
売り出し価格が市場相場より高く設定されていると、購入希望者の関心を引けず、売却期間が長引く原因となります。
現在はインターネットで簡単に相場を調べられるため、買主も周辺物件の価格を比較検討しています。
そのため、相場より明らかに高い物件は、内覧候補リストから除外されてしまうのです。
売主としては「少しでも高く売りたい」という気持ちは当然ですが、相場から大きく外れた価格設定は逆効果になると覚えておきましょう。
問い合わせすら来ない状態が続けば、最終的にはさらに大幅な値下げが必要になることもあります。
不動産会社の営業力不足
不動産会社の営業力不足も、売却期間を長引かせる要因のひとつです。
具体的には、インターネット掲載のみで積極的な営業活動を行わない受け身な姿勢や、担当者が多数の案件を抱えすぎてレスポンスが遅い、得意分野と異なる物件タイプを扱っているなどが挙げられます。
売却活動では、ポータルサイト掲載に加え、チラシ配布や店頭での広告展開、既存顧客への営業など、多角的なアプローチが必要です。
とくに地域密着型の不動産会社であれば、地元ネットワークを活用した独自の営業ルートをもっている場合もあります。
もし売却活動が始まってから「思ったより動きが悪いな」と感じたら、担当者に具体的にどのような活動をしているのか確認してみましょう。
場合によっては、媒介契約の種類を見直したり、不動産会社を変更することも検討すべきです。
売り出しタイミングが悪い
不動産売却には繁忙期と閑散期があり、タイミングを誤ると売却期間が長引く原因となります。
売れやすい時期は2〜3月の春の引っ越しシーズンで、新入学や転勤に合わせた需要が高まりやすくなります。
ついで9〜10月も秋の異動シーズンとして比較的動きやすい時期です。
企業の人事異動が多い時期であり、転勤に伴う住み替え需要が発生します。
逆に、年末年始の1月や夏休みとお盆が重なる8月は閑散期となり、購入希望者の動きが鈍くなります。
売却を開始する際は、繁忙期の2〜3月に新着物件として掲載できるよう、前年の11〜12月頃から準備を進めることが理想的です。
ただし、タイミングだけがすべてではないので「今すぐ売りたい」という場合でも、適切な価格設定と営業戦略があれば売却は可能です。
物件の魅力が伝わっていない
物件自体に問題がなくても、その魅力が購入希望者に適切に伝わっていないケースがあります。
インターネット掲載時の写真が暗い、枚数が少ない、物件の特徴や周辺環境の説明が不十分といった情報不足が原因で、せっかくの良い物件が見過ごされてしまうことがあります。
不動産会社に明るく魅力的な写真を複数枚使用してもらい、物件の強みを具体的に記載してもらうよう依頼しましょう。
それだけでも閲覧者の興味を惹きやすくなり、内覧希望者を増やせる可能性があります。
また内覧時には部屋を明るくして清潔にしておく、生活感を抑える、質問には丁寧に答えるなど、好印象を与えるポイントがあります。
とくに玄関やリビングなど、第一印象を左右する場所は念入りに準備しておくことが大切です。
不動産会社の担当者に事前に内覧対応のアドバイスをもらい、買主に良い印象をもってもらえるよう準備しておくのがおすすめです。
物件の条件や立地に問題がある
以下のように物件そのものの条件や立地に問題がある場合、売却期間が長期化しやすくなります。
- 駅から遠い
- 築年数が古い
- 日当たりが悪い
- 周辺環境に難がある など
とくに最寄り駅から徒歩15分以上かかる物件や築30年以上の物件は、条件面で不利になりやすい傾向にあります。
また、以下のような一般的な需要が低い物件も買い手が見つかるまでに時間がかかるでしょう。
- 農地や広すぎる敷地
- 旧耐震基準の建物
- 再建築不可物件
- 市街化調整区域にある物件 など
ただし、こうした条件面の課題があっても、適正価格の設定や物件の強みを前面に押し出した営業戦略により売却は可能です。
たとえば、駅から遠い物件であれば閑静な住環境や駐車スペースの広さをアピールする、築古物件であればリノベーション前提の買主をターゲットにするなど、物件特性に合わせたアプローチが効果的です。
条件面で不安がある場合は査定時に正直に相談し、どのような売り方が最適か具体的な戦略を聞いてみましょう。
経験豊富な不動産会社であれば、条件が厳しい物件でも売却実績やノウハウをもっている場合があります。
売却期間が長期化しないために不動産会社に求めるべき2つのこと

売却期間を短縮するためには、不動産会社との連携が欠かせません。
単に任せきりにするのではなく、売主として積極的に関わり、適切な提案や対応を求めることが重要です。
ここでは、不動産会社に求めるべき2つの重要なポイントについて解説します。
適正な売り出し価格を設定してもらう
売却を成功させるための重要なポイントは、適正な売り出し価格の設定です。
査定時には、レインズマーケットインフォメーションや実際の成約事例、周辺の売り出し物件などの客観的データを見せてもらいましょう。
単に「このくらいで売れます」という説明だけでなく、具体的な根拠があるかどうかを確認することが大切です。
高めの価格でスタートする場合は、市場の反応を見ながら1〜2か月後に価格見直しを行うスケジュールを事前に合意しておくことも有効です。
最初から適正価格で売り出すか、やや高めから始めて段階的に下げていくかは、物件の特性や市場環境によって判断が分かれます。
「首都圏」の「中古マンション」に限ったデータですが、売却期間が長引くほど、売り出し時よりも価格を下げることで成約しているケースが多くなっています。
たとえば売り出し後1か月以内の成約では、売却価格のまま成約となるケースが44.4%です。
しかし売り出し後9か月以内の成約では、売却価格のまま成約となるケースはわずか2.8%にまで減少します。
さらに、売却価格が成約価格より-20%乖離するケースが32.5%と最多となっています。(※3)
このデータからもわかるように、長期化すればするほど値下げ幅が大きくなる傾向があるため、早期に適正価格で売り出すことが重要です。
(※3)出典:株式会社東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」
臨機応変に売却戦略を見直してもらう
売却活動開始後も、定期的に活動状況を分析し、必要に応じて戦略を見直すことが重要です。
1か月経過しても問い合わせが少ない場合は、不動産会社に価格の再検討、写真や物件説明文の改善、広告媒体の追加などを提案してもらいましょう。
また、内覧は多いが成約に至らない場合は、物件の見せ方に問題がないか確認してみましょう。
3か月を超えても売れない物件は、一旦インターネット掲載を取り下げ、次の繁忙期に新着物件として再掲載するなども検討してみる価値があります。
長期間掲載されている物件は「売れ残り」という印象をもたれやすいため、一度リセットすることで新鮮な印象を与えられます。
不動産会社からの定期報告では、単に活動内容を把握するだけでなく、市場動向や競合物件の状況、今後の戦略提案を含めてもらうようにしましょう。
報告内容が具体的で建設的であれば、その不動産会社は真剣に売却活動に取り組んでいると判断できます。
売主自身も積極的にコミュニケーションを取り、「売れない原因は何か」「次にどう動くべきか」を一緒に考える姿勢が大切です。
まとめ
不動産売却の平均期間は3〜8か月ですが、適切な価格設定と戦略次第で大きく変わります。
売却を成功させる鍵は、信頼できる不動産会社選びと市場の反応を見ながら柔軟に対応していくことです。
まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、具体的な売却戦略や根拠のある価格提案をしてくれる会社を見つけましょう。
売却期間が長引くほど値下げ幅が大きくなるというデータもあるため、早めの行動開始が重要です。
今日から準備を始めることで、希望する期間内での売却実現に近づけます。
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iimon 編集部










